エイプリルフールなので浮かれてみました。小話その2
五年生達のエイプリルフール
「なあなあ、しってたか?今日の午後の合同授業なくなったってさ!」
「ヘー」
笑顔で駆けてきてそう言った竹谷に、はこれ以上ないというほど平坦な声を返した。
「…………なあ、、午後の合同授業がさ…」
「ほー」
「…………」
落ちる沈黙。
するとは目を落としていた本から、そういえば、と顔を上げ、
「あ、そういや話は飛ぶけどさ、い組に一人欠員が出るから、い組の余りとろ組の余りで寮の組、組み替え直すんだって?」
「え、マジ!?」
「ウッソー」
しれっと言い再び本に目を戻したに、しばしぽかんとした顔をさらした竹谷だったが、ハッとして頭をかきむしった。
「あああーっ!!だますつもりがだまされたっ!」
エイプリルフールって知ってたのか!?と詰め寄られ、ようやく本を閉じると呆れた視線を向けた。
「あんだけ学園長が騒いでるんだ、知ってるに決まってるだろ」
あとお前嘘ヘタクソな、と付け加えられしょぼんと肩を落とす。
「…やっぱりそう思うか?」
「それ以外どう思えってんだ。あんなんでだまされんの、一年生くらいだろうが」
あ、雷蔵なら一割くらいは信じてくれっかもよ?行ってこいよ、と言われ、竹谷は力なく首を横に振った。
「もう行ってきた……」
その様子に、ああ、で失敗したわけか、と察しをつける。
「雷蔵にすらあっさり見抜かれたか」
「どころか、『ああ、うん、そうらしいね。なんでも木下先生達が急な出張が入ったらしいよ』って言われたからつい、え、ホントに?って聞いたらにっこり笑って、『嘘だよ』って……」
雷蔵にまでだまされたー!と身をよじる竹谷の暑苦しさに眉を寄せつつ、
「『まで』ってことは、他にもだまされたのかよ」
ぐっと詰まったが、深く息を吐き地を這うような声で、
「兵助にも、『孫兵が、なにか大変だっていって捜してたぞ。ジュンコが卵生んだんだって?』ってだまされた……」
「へー。じゃああと三郎にだまされれば完璧じゃん」
行ってこいよ、とさらりと死地に追いやろうとするに、ひどいっと明らかな嘘泣きを始めた竹谷。
「ヒデェ、この俺の、傷ついた繊細な心をっ」
「金剛石もビックリな強度を誇る図太い心臓の持ち主がなにを言う。あーほら、お前が寒いこと言うから鳥肌たっちまったじゃねェか」
見ろこれ、と袖をまくってが腕を見せていると、
「ねえー…あれ、ハチもいたんだ?」
からりと戸を開けて入ってきた雷蔵が中の様子を見て、何やってるの?と首を傾げた。
「うわぁぁあん、雷蔵ーっ」
嘘泣きで飛びついていった竹谷をひょいとかわし、どうしたの?と再度聞いた雷蔵に、は呆れた視線を向け、
「お前にまでだまされたから壊れたらしい」
「は?僕に?」
雷蔵は純粋だって信じてたのに、と丸くなる竹谷をいぶかしげに見ていた雷蔵は事の次第を聞き、
「なにそれ」
一言言った。
「それ、僕じゃないよ」
「「へ?」」
ぱちくり、と瞬きすると竹谷。
「いやだなぁ、三郎ったら僕の顔でそんなことしてたの?」
しょうがないなあとため息つく雷蔵に、竹谷はうつむいて身を震わせ、
「さぶろおぉぉおおおっっ!!」
ダダダダダッと足音激しく走り去った友の姿を見送った二人は。
「……………………………………………………………雷蔵、」
「今日は嘘をついてもいい日だからね」
にっこり、と雷蔵は華やかに笑った。
幕間のひとの雷蔵は、爽やかに黒いのです(笑)
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